なぜなのか、自分でもわからない。
気がつくとかつて操っていたMSの方に向かっていた。


『なんでトールがいないのに、あんたなんかが此処にいるの…!』

『オーブは私の国だからよ』


「(ナチュラルはやっぱ、みんなバカだ…)」
脳裏に浮かぶのは短期間の間に様々な感情を自分にぶつけてきた少女。
彼女の愛するものを殺したのは自分ではないと判った時、自分は何故あんなにも安堵したのか…?

「(わかんねえ…)」

失いたくないと、思った。
あの少女を死なせてはいけないと。

「(バカはオレの方か…)」



ど う し て …



『さっさと下がれ、アークエンジェル!!』


“どうして…”

彼からの通信と捕獲したはずのMSが動いているのを見た時、アークエンジェルの誰もがそう思ったろう。
特に私は他の皆よりそう思った。
「(なんでアイツ…?)」

動揺と疑問でいっぱいの間も、アイツはバスター特有の重火器でアークエンジェルの周りの敵を撃ち落としていく。

…戦いが終了した後も、アイツはそのままアークエンジェルに残った。
どうしてなの…?そのまま逃げれば良かったのに…。





宇宙に出てすぐ、オレは艦長やフラガに問われた。

“どうしてこの艦に戻ってきたのか?”

ま、そりゃそうだわな。
オレは散々アークエンジェルを追い回した、ザフトの人間だし。

「どうなんだよ、坊主。」
「…別に。」

元ストライクのパイロットのような業を背負ってるワケでも、使命感みたいなもんがあるワケでもない。
…ただ

「案外あんたと同じ理由かもな、おっさん。」
おっさん、のあたりで眉をぴくりと動かし、「おっさんじゃない!」と反論する。
その様子を艦長が苦笑して眺めていた。

「…オレと同じ理由ね……。ま、いっか。そういうことにしといてやる。」
腕を組んで薄笑いを浮かべながらオレを眺めるフラガを、艦長が不思議そうに見ていた。

「だけど本当にいいのか?良く考えたのか?…かつての仲間と戦うってことだぞ?」
「…ほんっと、ナチュラルってバカがつくほどお人好しばっかりだな。」
そんなこと、此処に残ると決めた時、さんざん考えたさ。
所属していた隊の最後の一人になったであろう同僚や他の同朋のことを思うと、全部覚悟できてると言い切ることは出来ない。プラントを裏切ったつもりもないからだ。
だけど…オレは見てしまった。
自分にナイフをむけてきた少女の、怒り、悲しみ、強さ、優しさ…。
ゲーム感覚で、“バカなナチュラル共は一掃すべき”なんて思想で、 なんとなく武器を手にしていた自分がひどく滑稽に思えた。
コーディネーターとナチュラル。…どちらもただの人間で、胸にある思いはかわらなくて…。

大事なものを…大事になったものを守りたいのだ。

「きれいごとを並べてみたけど、実際のところは、後々寝返られても困るってことだよ。…戦力は多い方がいいからな。」
「あはは、わかってるって。…その辺は心配いらねえよ。」
オレはこっそり少女のことを想った。

暫くオレの顔を見てなにやら考えていたフラガは、
「心配ない。なんかしでかそうとしたら、オレがなんとかする。」
と艦長に進言して、オレの肩をポン、と叩いた。

話を終えて廊下に出ると、なぜか例の彼女が立っていた。



「なんだ、どうしたんだよ?なんか用?」
「どうして…」
「え?」
「どうしてアンタ戻ってきたの…?帰れば良かったのに。…アンタにだって…家族とか、大事な人、いるでしょう?」

オレを睨み付けながら言葉を吐き出す。

「でも、オレが戻ってこの艦助かったろ?」
「…!そ、れは…そうだけど……ありがとう……。」
変に律儀な彼女に苦笑する。
「ならそれでいいじゃん。」
「…あ、ちょっ…よくないわよ…!」

反論する彼女をおいて、バスターの整備に向かう。
「(ホントはもうちょっと、話してたいんだけどね。)」

昔のオレや同僚だった奴らが今のオレを見たら、らしくないと笑うだろうな。
今「どうして」と問われても、なぜだか理由を言えない気がするのだ。
もう少ししたら、素直に言えるだろうか?

”君を守りたかったから“だと。





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ディアッカの、理由。


23 : どうして…  20031019




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