○月×日 『うるんだ瞳。』 今日は太一君が遊びに来たわ。 「あら、いらっしゃい。」 「お邪魔しまーす。」 太一君ってホント、会う度に素敵な男の子になっていってるわね〜♪ 光子郎と並ぶと恋人どうしみたいでドキドキしちゃうわ。 挨拶もそこそこに二人は光子郎の部屋へ…。 「光子郎、お母さんちょっと買い物に行って来るから。」 いつものように家を出る。 お友達が来てる時はいつもそうするの。 だってお家にいると、光子郎ってば申し訳無さそうに 「…部屋にはちょっとの間、入って来ないで下さいね。」 なんて云うんだもの。 隠してるつもり? ふふふ、甘いわよ。お母さんなんでもお見通しよッ! 息子が部屋でどの子とどんな青春送ってるか分かるように、お母さん、 隠しカメラと盗聴器仕掛けてあるんだもの!! ふふふ。 …光子郎が学校にいってる間に録音・録画してあった『それ』を視聴。 「…光子郎、これはどうなるんだよ。」 「ああ、えっと、さっきの式に代入して…」 …どうやら勉強してたみたいね。 「…で、答えはa=1/2、b=3、となるわけです。わかりました?」 「…う〜ん…、わかんね。」 太一君が光子郎に向かってにっこりと笑う。 「もう、しょうがないですね。」 顔を少し赤らめてその笑みに応える光子郎。 …光ちゃん、世話焼き女房化してるわ。お母さんをこんなにドキドキさせていけない子ねえ。 て、いうか。 年下の光子郎に勉強見てもらってる太一君も、おばさん、どうかと思うわよ…。 光子郎は向かい合っていた席を移動し、太一君の隣についた。 「いいですか?最初から説明しますから…」 「うん。」 光子郎がノートを見ながら説明してるのを申し訳無さそうに聞いてる太一君。 「……。」 太一君は視線をノートから光子郎へ移し、口をきった。 「光子郎、お前ホント小せえなあ。ちゃんと食ってるのか?」 ふいに光子郎を後ろから抱きすくめる。 「!わ、わわ、何やってるんですか!?真面目に聞いててくださいよっ!」 「だあって、ほらー。」 なるほど、この何年かで光子郎はすごく成長したけれど、太一君といっしょにいるとやはり小さくみえる。 太一君の腕の中にすっぽりと収まってしまっていた。 う〜ん、母親としてはもっと大きく、逞しく育ってほしいとか普通なら思うトコだけど、 『嗚呼、お姫さまみたいな息子もいいかなあ…。(うっとり)』 なんて思っちゃうのよね。 こんな状況を見ちゃうと。 光子郎は自分の胸に回っている太一君の腕に手をのせると、消え入るような声で云った。 「…あついです…。太一さん…」 「ん?」 「あついです…。」 光子郎の顔は真っ赤だった。 …光子郎、お母さんもなにやらあつくなってきたわあ〜ッ!(どきどき) 「ああ、ごめん。」 訴えられた太一君は躯を離すと、今度はその手を光子郎の頬にあてる。 「…本当だ。真っ赤だな、光子郎。…熱っぽいぞ。」 「………太一さんの手、冷たくて気持ち良いです…。」 「そっか…」 太一君はもう片方の手も光子郎の頬にあてる。 「…気持ち良いです…。」 光子郎はうっとりと、そして潤んだ瞳で太一君を見つめている。 …こ、光子郎、それは危険よ。そんな瞳で見つめるなんて 『今すぐ犯っちゃって』って云ってるようなもんなのよッッ!! …息子に正しい性教育を教える方法、どなたか教えて下さい。 こ、こういうコトって早いうちにする方が良いのよね…。 中一じゃもう遅い? お父さんに相談……うッ!ダメだわ。変に勘ぐられたらわたしのお昼の楽しみが…ッ! (※注意:光子郎パパは何も知りません。) 案の定、ふたりは沈黙の中で見つめあい、そして… ああああああああ… …まるでそれが自然であるかのごとき振るまい… お母さん、震えが来ちゃいました。 まだドキドキしてるわ、どうしよう。 …チュウしてるシーンで一時停止したまま固まっちゃった …。 息子が不純同性交友してるのに喜んでる母親ってダメかしら…? …でも、だって、 かわいいんだもん…。 …だからあの日のあの後、光子郎がちょっとハイテンションぎみだったんだわ。 なにかあったとは思っていたけれど…。 そーだッ!遅くなったけど、今日は御赤飯でも炊きましょうか♪ |